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いにしえの建築をめぐる旅

【旧藩主の邸宅④】<清閑亭>旧黒田長成侯爵別邸

先日ネットニュースをみていたら「秋月藩400周年」の記事が目に入りました。

秋月藩黒田長政の三男、黒田長興を藩祖として1623年に誕生した藩です。

現在の福岡県朝倉市を中心に栄え、今年で藩が誕生して400年ということで2023年は記念事業が行われるそう。

ということで今回の記事では(秋月藩主の黒田家ではないのですが)福岡藩主黒田家第17代当主である黒田長成侯爵別邸である通称「清閑亭」をご紹介したいと思います。

※2023年9月現在は休館中です。

清閑亭

この通り何度か所有者を変えて現在に至っています。

支藩も含め福岡藩52万石の旧藩主とあって、黒田家は現在の東京赤坂にあった本邸の他、福岡、沼津、大磯など各地にお屋敷を構えていましたが、現存しているのはこの小田原の別邸のみとなります。

現在も残っているのは歴代の所有者が大切に保存してきた、ということでしょうね。

敷地南側より。

明治以降、小田原は全国有数の保養地となり、明治大正の政治家や皇族などたくさんの上流階級の別邸がひしめいていました。

清閑亭のパンフレットに小田原邸園のマップが載っているのですが、文字通りひしめくようにお屋敷が建っています。

この清閑亭は小田原城三の丸土塁の一角に位置しているのですが、小高い丘の上に建っているため見晴らしが良く、まさに保養所として最高なロケーションです。

2階より

黒田長成侯爵について

枢密顧問官や貴族院副議長、その他にも豊臣秀吉を顕彰する豊国会、菅原道真を顕彰する菅公会の会長も務めていたので交友関係が広かったようです。

この別邸にもたくさんのお客さんが招かれていたのでしょう。

屋敷の前

ところで、この清閑亭を思い出す時、一番最初に思い浮かべるのはお屋敷の前に立っている大きな木。

何の木なのか、いつから立っているのかは知りませんが、風に葉が揺られサワサワと音をたてて、木陰から陽の光がおうちに差し込んでいる様子が印象に残っています。

清閑亭は相模灘を一望できる眺望の良さや、お庭とセットで「邸園」と呼ばれていますが僕にとっては「大きな木の下に建つお屋敷」のイメージで、清閑亭のお気に入りポイントの1つです。

2階からも青々とした木が印象的

それともう一つ(個人的に)気に入っているのは「清閑亭」という名前です。

「閑」はすることがなくヒマという意味ですが「清」がつくことで、「清らかにのんびりと時間が流れているおうち」という響きがあり別荘の名前としてGOODです。

ただ、長成侯爵の奥様である清子夫人の清の字と、侯爵の長男の奥さんの実家である閑院宮殿下の閑の字からとっているのでは、という意見を見かけてなるほど、それはありえると思いました。

この屋敷の隣に閑院宮殿下の別邸もあったことからすると殿下より一文字頂いたのかも?

南側の庭園と海の見える眺望も良し

平成22年から一般公開を行い、カフェや展覧会などを行い、建物の活用をしてきたようですが、2023年9月現在は休館中で、小田原市のHPによると今後は「小田原別邸料理 清閑亭」としての開業にむけて目下協議を重ねているようです。

素敵なお店ができると良いですね。