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いにしえの建築をめぐる旅

【三重県桑名市】六華苑(旧諸戸邸)

三重県桑名市にある旧諸戸邸は、実業家である二代目諸戸清六氏が大正2年(1913年)に建てた洋館と和館からなる邸宅です。
洋館部分は、木造二階建、塔屋付きスレート及び銅板葺き、鹿鳴館等を建てた英国の建築家ジョサイア・コンドルが手掛けた建物です。

東京あたりで主に仕事をしていたコンドルさんが地方で唯一てがけた建築になってます。

諸戸邸はコンドルさんが61歳の時の建物になるので、67歳で亡くなっているコンドルさんの晩年の作品ということになりそう。

洋館及び和館は平成9年に国の重要文化財にも指定されています。

印象的な水色の洋館は建築当時からのようで、この水色はわざわざ横浜経由で外国から取り寄せていたとか。

それだけでなく洋館の材料はすべて海外から取り寄せたものばかりで、玄関、ベランダ、トイレの床タイルは1917年に竣工した古川邸と同じタイルを使用しており、ガラスは1915年竣工の島津邸と同じ湾曲したガラスが使用されているとのこと。

もともと井上馨に招かれて鹿鳴館を建てたり、その後は政府高官などの邸宅を請け負っていたコンドルがなぜ、桑名の諸戸氏の邸宅を建てることになったのか、という点については諸説あるようだけど、初代諸戸清六氏が大隈重信と知り合いであったこと、そして三菱海運と仕事をしていた可能性があり、そこで財閥の岩崎家と顔見知りになったことかららしい。コンドルは岩崎家の顧問だったので、そういった経緯で2代目清六氏が岩崎家を通して、コンドルに設計を依頼したようだ。

 

洋館の玄関からは入場ができないため、隣の和館から入ることになる。

洋館1階には、広めの玄関ホールがあって、食堂、客間、応接室、二階への階段に接続している。

食堂、客間にはコンドルが好きだったと言われるの薔薇のデザインを見ることができるし、19世紀、20世紀前半のイギリス製の家具も置いてある(これは諸戸家にあったものなんだろうか?)。

 

2階へ上がると居間、書斎、寝室、女中部屋がある。

そしてサンルーム。

天気が良いと、広い庭からの風と、木々の緑がとても心地よい。

このサンルームにいると、六華苑はこの広い庭とセットで残っていてホント良かったなと思う。青々とした緑が窓ガラスに反射して綺麗なんだよね。とても。

どうも当初、明治村に寄贈するという案もあったとか。

しかし明治村にはもう移築する場所がなかったため、桑名市が引き受けた。

どこまでほんとかわからない話だけど、でも桑名に残って良かったと思う。

そんなコンドルが建てた洋館が有名なこの建物だけど、実は和館も立派です。

木造平屋建(一部2階建)、入母屋造、桟瓦葺。工匠棟梁伊藤末次郎。

洋館と同時に建設していたようで洋館と和館が並列して建っています。

洋館・和館の全体のデザインを誰が決めたのかまでははっきりしていないとのこと。

入ってすぐの印象的な廊下。

和館は一の間と二の間があり、それぞれに次の間が接続されている。
とても広くて、そして落ち着く。

洋館が目当てで訪問したし、外から眺めてもまず水色の洋館が目に付くんだけど、いざこうやって行ってみると、個人的には和館が落ち着く。

案内によると二代目諸戸さんの奥様も(病気の療養などもあり)で和館ですごしていたようで、どうも家族の生活の場になっていたようだ。

広大なお庭の緑が反射して、綺麗。

というわけで、満足の建物でした。

車で来る人にとっては駐車場(無料)もしっかりあって、良かったです。それほど混んでいるわけでもないし。

入苑料は大人460円(令和4年11月現在)。

春と秋で諸戸氏庭園も限定公開されている。たまたま公開されていたので、そちらも観に行ってきました。こちらもかなり広いお庭で。

しかし、この広大な庭の管理だってかなり大変だっただろなあ。