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いにしえの建築をめぐる旅

【鳥取県への旅②】敷地面積3000坪、部屋数40の大規模木造住宅「石谷家住宅」へ行ってきました

1泊2日の鳥取旅行で行った「石谷家住宅」は、鳥取県八頭郡智頭町(やずぐんちずちょう)にある、敷地面積3000坪、部屋数40余り、7棟の土蔵を有する大規模な木造邸宅です。

建物は古いものだと江戸時代に建てられているようですが、主だったものは大正8年から10年ほどかけて行われた大規模改築によって建てられたものだということです。

築100年前後ということですね。

そんな歴史ある木造建築を紹介する前に、八頭郡智頭町について。
ここは鳥取駅から車で約40分ほど南に走った場所にあります。

今回、愛知県から兵庫県を経て鳥取に来たわけだけど、走りながら印象に残ったのが中国地方の「山々の深さ」です。
この日も鳥取市から車で向かうと、天気が良かったということもあって山間部の穏やかな風景が広がっていました。

それもそのはず。

智頭町、はまちの総面積の9割が山林だそうです。
そんな深い山々に囲まれている町を綺麗な川が縫うように横切っています。

案内によると智頭町は、「初代鳥取藩主、池田光仲公の参勤交代の宿泊地と決まってから町屋が軒を並べ町方・在方・他国商人との交流で賑わうようになった」とのこと。

石谷家住宅の駐車場に車を停めた後、周辺をぐるっと散歩してみると、なるほど宿場町の面影を見ることができました。

宿場町としてかつて人の往来で賑わっていただろう通りは、現在は町のメインストリートとはいえないかもしれない。

でも車が1台通れるかくらいの沿道沿いには、ぽつぽつと古い家屋が並んでいて、宿場町の面影や情緒はしっかり感じることができた。

江戸時代に旅館や旅籠をやっていた人たちの子孫の方もきっとまだいらっしゃるに違いない。

そんな宿場町としての風情を残した街の中で、今回僕が訪問したのが石谷家住宅です。

部屋数40あまり...という紹介のとおり、

まるでそのまま旅館に使用できるかのような大邸宅でした。

しかも見学が終わって受付の方に聞いたら、所有者さんの居住箇所がまだ奥に存在しているとのこと。

一体どんな人が暮らしていた家なんだろう?

石谷家は江戸時代、大庄屋に任命されてます。

大庄屋(おおじょうや)というのは江戸時代の最上位の村役人。

村の代表として行政との間を取りまとめ、村を統括していました。

また参勤交代の際には、殿様についてきた上級武士がここに宿泊してました。

つまりその地方の裕福で教養のある格式の高い家ということですね。

また明治以降もご当主は資本家として地場産業の振興をはかったり、学校建設や道路改修など篤志家として町の発展に尽くしたそうです。

明治30年代には当時の当主である石谷伝四郎氏が衆議院議員に選出されており政治家としても活躍しています。

家が広いのは明治以降、山林経営を大規模に行っていたことにあるようです。

居宅としてだけではなく林業経営の事務所としても使っていたとのこと。

囲炉裏の間、和室応接や江戸座敷等、応接室が広めにとられていたのはそういうことだったんですね。

いろんな来客や仕事の打ち合わせを行っていたんでしょう。

天井板、柱などに使用された樹齢300年の杉

応接室の天井材に使用された奈良の春日杉

土間の梁として使用されている巨大な赤松と大黒柱の欅

各部屋の欄間に床柱

花頭窓にハート形(猪の目模様)の窓

邸内各所に職人たちによる、こだわりの細部を見ることができます。

 

 

 

とりわけ僕が一番、印象に残ったのは主屋の入口をくぐってすぐに広がっている土間です。

ここは高さが14mもある広い空間で、思わず見上げてしまうほどです。

というのも赤松を使用した巨木が梁として幾重にも使用されていて、とても重厚感ある空間なんです。

真下から写真を撮ったんだけど、どうもその時の迫力を伝えきれそうにないのであえてここで掲載しません(笑)。

土間とその梁が好きな人、通称「ドマニア」な方にはぜひおススメです。

邸内には喫茶・軽食「石谷家住宅 庭園の見える喫茶室」があり、昼食はここでとることにしました。

もともと、この部屋は石谷家の居間・食堂という「家族の団らんの場所」だったようです。

その見学も兼ねての食事ということになります。

以下珍しく食事の写真(旬菜カレー800円)。おいしかったですよ。

この部屋は国登録名勝地「石谷氏庭園」に接しています。

そのため窓から見える庭園の緑と気持ちの良い天気もあって穏やかなランチタイムをすごすことができました。

この部屋に限らず、庭園に接しているためか、外の緑がとても印象に残る家でしたね。というわけで鳥取に来た時にはぜひおすすめしたい場所です。

歴史とその情緒に触れて静かでスローな時間が過ごせますよ。